ドイツ語通訳の話 その3
ある会社から、「カールスルーエ原子力研究所を訪問する小さなグループがあるので、
2日間の通訳に行って欲しい」、という問い合わせがあった。
それまで色々な町、メッセ、企業、病院、老人ホームなどを訪れたことはあるが、こういう研究所は
初めてである。だとしても仕事は断りたくない。「ご満足してもらえるかどうかは分りませんが、
最大限の努力をします」、ということを伝えて承諾する。幸いなことに、その訪問する
グループリーダーから、研究所の資料と、訪問の目的、そして質問条項などを事前に
送ってもらう。これが役立った。この研究所に限らず、双方の目的、事情を前もって
知っていれば、それに付帯する専門用語なども事前に調べることもできる。というわけで、
仕事の1週間前から、送られてきた資料を辞書を引きながら読む、という作業に専念する。
それにしても、研究所のバランスシートまで読むとは思わなかった。まあ、それはそれで、
いつかの日の役に立つだろう。
というわけで、1日目は、電車で到着のお客様をお迎えし、昼食後に私のミニバスで研究所に
向かう。こういう場合、足の確保ができているのは本当に便利だと思う(完全に自己宣伝では
あるが、少人数なので自分でもその方が仕事がしやすい)。
研究所のオフィスで内部の事情説明と質疑応答に3時間半ほど費やす。自分が思った以上に
通訳がうまく進行した。これも事前に資料を送ってもらったおかげである。それに加え、
技術的な話も出て来るが、私自身も興味があるので通訳していて面白い。面白いから疲れない。
翌日は再び私の車を使って、研究所内を移動しながらいくつかの施設の説明を聞く。なんと、
サイクロトロンを見る機会に恵まれた。電子をぶつけて、チップの基盤を製造する、という
普通の人では全く想像もつかないことをやっているそうな。こういう機会でもないと、この様な
施設を見ることはないだろう。「高速増殖炉」、「ガラス固化」、「燃料棒」と言った専門用語も、
知ってはいたが、実際に使う機会があるとは思ってもいなかった。
良い勉強をさせてもらったものである。
ただ一つだけ、とんでもない誤訳をした、と後で気がついた。
ビュルゲン(buergen、保障する)と言う言葉を、ヴュルゲン(wuergen、絞め殺す)、
と言ってしまった。相手がちゃんと理解してくれたから良かったものの・・・・(冷や汗)。